僕のお薦め 『MIKROPODIUM』 人形芝居 燕屋 くすのき燕
1998年5月、ポーランドのビエスコビアワ国際人形劇フェスティバルの最終日、ストリートでの上演者が一同に会して、街の広場で連続上演をしました。そこでの上演がおわると、最終公演のある市民劇場まで短いパレードをするのです。肩掛け人形芝居『ねずみのすもう』で参加していた僕もその中にいました。少し早くおわった僕は、広場のカフェでビールを飲んでいました。上演が終わった開放感もあり、そこに集まったヨーロッパの人形劇人たちに「この舞台は飛行機にものるぞ!」と僕の「小さな舞台」を自慢していました。そこへ、公演が終わったレナート氏がやってきて、「俺のはもっと小さいぞ」と、すでにパッキングを終えた状態の舞台を見せてくれました。僕は「うーむ」と小さく唸り、「日本に来ない?」と明るく誘ってみました。彼は「機会があれば、行ってみたいなあ」と応えてくれました。
STOP!は、そのときに上演していた演目です。
屋内外のあらゆる場所で、上演が可能。小さなステージに登場するシンプルな人形たちは、彼の精緻な人形操作のテクニックによって、生命を与えられます。セリフは一切なし! ひとつひとつの作品は3分から5分程度のものですが、音楽に合わせた動きの中に「詩」がつまっています。
作品の優れた芸術性は勿論ですが、それとともに素晴らしいのは、彼の観客への謙虚な姿勢です。拍手を受けた時の、彼のはにかんだような照れたような笑顔に、ぜひ出会ってみて下さい。
CON ANIMAは、「心をこめて」という意味のラテン語。アンダンテ、ダカーポなどと同じように音楽用語として使われる言葉です。その名の通り、これは「緻密な魂の芸術」とでも形容したい作品です。ポーランドのビエスコビアワ国際人形劇フェスティバル芸術監督賞、プラハ国際人形劇フェスティバル最優秀芸術賞などのほか、多くの賞を受けています。50cm×40cmの砂のトレイを舞台に、2本のロウソクを照明として演じられるこの作品は、象徴的なストーリーを持つ、主におとな向きの作品です。砂山からはいだしてくる妖精とも妖怪ともとれる人形は、砂の中に何かを探し、いくつかの物を発見します。(わお。どんな物を見つけるのか、物すごく書きたいけど、あえて書きません。お楽しみに。)それらに与えられた多くにイメージが作品の広がりを与えています。
イメージで見せるタイプの作品でありながら、単に思わせぶりなだけのものに終わっていないのには、2つの要因があるからだと僕は考えます。ひとつは、レナート氏の超絶技巧。それに支えられた的確な人形は、意味を明快にするともに、名人芸を観るという楽しみさえ与えてくれます。ふたつ目は、無駄のない演出です。人形や発見される物たち。砂やロウソクの火。そして、操作者であるレナート氏。観客が目にする道具立ての全てに意味が与えられています。公演時間は約15分。観客数は最大50名。濃密で贅沢な時間を楽しんでください。
(2005年公演時のHPより)
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