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    劇団うりんこ 
    弟の戦争−GULF−  脚本・演出=鐘下 辰男

    平和な家庭にある日、戦争が入りこんできた!弟の小さな体に丸ごと・・・。
    弟を襲った不思議な事件を通して兄が見たものは
    世界中のGULF<湾・断絶>。
    弟はその「断絶」に橋を架けようとした子どもだったのだ・・・。

    8月26日(金)18:30  南区民文化センター
    一般チケット 前売 一般3,500円 学生2,500円 (当日は500円増)

★★★ 終了しました。ご来場下さった皆さまありがとうございました。★★★

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  • みせ方、表し方がおもしろかった。カッコイイ。「音を実感」っていうのが、なるほど!と思いました。おりの中でも幸せなのかも。幸せなのかなー? 人ってやっぱり、おもしろい!!(20代・女性)
  • 最初は、「弟の戦争」のいみがわからなかったけど、劇を観て、素晴らしい内容だと思いました。(小4)
  • 久しぶりに見応えのある舞台を見ました。舞台の上に極限の状態を作り出して、俳優たちまでも、その状態に追い込んだ芝居は新鮮でした。演劇として、出来る限りの「実感」を観客に与えようとした演出に魅せられました。音で、振動で、客席を戦争に近づけながら、それでいて演劇の限界も見せてくれたように感じました。私たちは戦争を、人の死をどうしたら実感できるのか、戦争廃絶のための大きなテーマだと思います。(50代・女性)
  • 「どんより」いい意味でのトラウマありがとう。
  • 言葉にならないくらい感動した。(20代・男性)
ご覧になられた方、いかがでしたか。ぜひ感想をメールでお寄せ下さい。


今を生きる若者が湾岸戦争からイラク戦争を体験しつつある現代を照射する『弟の戦争』に出会うことで、
今なお現実に起きている戦争で傷つき、死んでいる真実と向き合い、
戦争の悲惨さを知識としてではなく、体験として実感していく機会になると思います。
また、公演終了後、演出家の鐘下辰男氏を迎え、作品についてのトークを行います。

  

原作 ロバート・ウェストール 訳 原田 勝
脚本・演出=鐘下 辰男

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物 語

小さかった頃、トムには「フィギス」という空想上の友だちがいた。3才の時、弟が生まれた。トムは弟を「フィギス」と呼んだ。弟は心のやさしい子どもだった。弱っている動物や飢えた難民の子どもの写真を見ると「助けてやって!」と言った。人の気持ちを読み取ったり、遠くの国の人々と交信する不思議な力も持っていた。
ある日、弟は奇妙な言葉を喋りだし、自分は少年兵ラティ−フだと名のった。最初は夢の中で、あるいは入眠のような形で、時々、「向こう側」へ行っていた弟から面白半分に、トムは話を聞き出した。
弟はどんどん、少年兵ラティーフの世界へのめりこんでいった。「向こう側」では戦争が始まっていた。弟の体は「こちら側」にありながら、心は戦場にあった。もがき、苦しみ、命さえ危ないところまで、追い詰められていく弟。
しかし、典型的な家庭の居間は安全であり、まるでゲ−ムのように、テレビには戦争が映っていた……。
フィギスは13才、1990年のことだった・・・・。

『知恵と経験−弟の戦争から』   脚本・演出=鐘下 辰男
 なぜ戦争は人間を残虐に変えてしまうのか? そもそもいかなる人間も残虐行為に走らせてしまうというところに戦争の真の恐ろしさはあるわけです。今こうして、日々のニュースなどで戦争の悲惨さに胸を痛めている私たちでも、その場にいってしまえばしっかり残虐行為を起こしかねない、そこにこそ本当の意味での戦争の悲惨があるのではないでしょうか。そしてその悲惨は、決して物の善悪を語っただけでは知ることはできないものだと私は思います。
 この「弟の戦争」という作品がすぐれているのは、そうしたところをうまくドラマ化している点にあります。私たちは今でもどこかで戦争が行われていることを日々のニュースで知っています。そこでどういう悲惨なことが行われているのかということも知っています。そして心を痛めたりはしています。しかし、これはあくまで知識として有しているというだけで決して戦争を「経験」しているわけではありません。経験なき知識というものがいかに脆弱なものであるか、私たちは日々の暮らしでそれを実感することが多々あるわけですが、それは戦争も同じことです。
 この作品の主人公は、戦争のない平和な国で暮らしているにもかかわらず、日々変貌していく弟と接しながら、直に戦争を経験していく物語です。そして彼は、弟をそう変貌させてしまったのはもしかしらたら自分ではなかったのかということを発見していく物語です。知識としての戦争を理解するドラマでではなく、経験として戦争を実感していくドラマです。
 こうしたドラマ性を実現できるのは演劇でしかできません。映像は結局は知識でしかないからです。自分たちが普段生活している日常空間に、突然変貌していく人間を目の当たりにすることができる演劇だからこそ、観客は戦争を経験し、実感できるわけです。この作品の主人公が、日常生活の中で変貌していく弟を目の当たりにしながら戦争を経験し、実感したように・・・。

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鐘下辰男プロフィール

1987年に「演劇企画集団THE・ガジラ」を創立。以後、劇作家・演出家として作品を発表。1992年に「tatsuya−最愛なる者の側へ」などで第42回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。1997年には、第32回紀伊国屋演劇賞個人賞を「PW-PRISONER OF WAR」の戯曲と演出、文学座に書き下ろした「寒花」で受賞。また、第五回読売演劇大賞の大賞・最優秀演出家賞を「PW」/「温室の前」(作・岸田国生)/「仮釈放」(原作・吉村昭)/「どん底」(作・松田正隆)の四作品で受賞。最近の作品は「薮の中」「ルート64」「KASANE」「国粋主義者のための戦争寓話」他。劇団うりんこでは2002年2月にアトリエ公演の「カ・ントリー」の演出を行っている。

公演終了後、演出家の鐘下辰男氏を迎え、作品についてのトークを行います。

 

これまでの公演アンケートより

・フィギスが戦場で一緒にいる人たちの様子を話すところで、一人一人が戦場にいることを感じ、自分の大切な人がそうなったらと考えずにはいられませんでした。身近に感じることがなかなか出来ないものを感じさせるすばらしい舞台だったと思います。(17才)
・空間演出がすごかったです。色々考えさせる舞台でした。本当のフィギスが兄の中にあったのだと思えます。すごく刺激的な演出でした。今までにない劇を観られて本当に良か。った(21才)