子どもコミュニティネットひろしま 特別シアター

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スコットランド ダンディ・レップシアター公演

Dr.Korczak's Example

コルチャック先生の選択

2006年3月4日(土) 13:30・18:30 
アステールプラザ・中ホール

料金:前売券 一般2,500円 学生1,500円
(当日は500円増・未就学児の入場は出来ません。)

字幕スーパー付

*** 終了しました ***


3月初旬という日本的にはとても忙しい時期に
『コルチャック先生の選択』公演に、ご来場いただきありがとうございました。

コルチャック先生は、お芝居でも紹介されましたが、「子どもの権利条約」の基礎を考えた人です。でも、このお芝居は、彼の功績をたたえるためのものではありません。ナチスに迫害され、多くの子ども達や老人達、いわゆる弱者といわれる人たちへも、その追及の手を緩めなっかたナチスの行為を観ながら、私だったらどういう選択をするか、という問いかけをしている作品です。イギリスでは、このような作品の上演とともに、事前、事後のWSが合わせて行われ、結果ではなく選択に至るプロセスをディスカッションするという時間が保証されています。いきなり、日本でこれがそのまま受け入れられることは難しいと思いますが、結果ありきですべてがまとまる(言い換えれば強い意見に流されてる方が楽だという傾向)ことの恐さ、何も考えないで月日を重ねていくおろかさをどこかで気づいていく、その1チャンスになればと思い企画しました。

昼公演のアフタートークで、アジオ役のケビンが、「自分からみなさんに質問したい」といい、「広島、長崎の原爆投下について、日本の人は、みんな原爆には反対だがアメリカは憎んでないと言います。日本人てこんなに寛容な人たちなんだ、とびっくりしました。もし僕達スコットランドだったら、こんなに簡単にアメリカを許せないし、こんなに好きになれないと思う。ほんとにみんな、こんなに寛大な気持ちを持ってるの?」と投げかけました。会場は苦笑いが広がりました。

平和は大事、戦争はよくない、ということを教条的に教え込まれている日本の子ども達(大人も)は、この結論に至るまでのプロセスを奪われているように思います。戦争は仕方ないこともあるという意見は、正義の声で一瞬に消え去ってしまう。でも、ここのところを十分に議論しないと、真に平和を考えたり戦争を反対したりという勢力にはならないですね。教育の力は恐いです。これを機に、学びあう場を持ちましょう!学ぶということは、感じること、そして自分で考えることだと思います。決して正解を求めることではないと思います。この『コルチャック先生の選択』の“選択”にこめられた意味を、もう一度考えてみませんか?今回、見に来てくださったみなさんに感謝するとともに、少しでも権利=当たり前のことという意識が広がっていくことを願います。

(子どもコミュニティネットひろしま 代表理事 小笠原 由季恵) 

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事前ワークショップ「独立行政法人国立病院機構 呉医療センター附属リハビリテーション学院」のみなさん(3月2日)

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事前ワークショップ 一般向け (3月2日夜)

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事前ワークショップ 広島市南区あさひ幼稚園の先生方(3月3日)

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事前ワークショップ 講師:スティーブン・スモール氏

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公演後のカーテンコール場面

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平和公園をまわられた劇団の方々


今英国で最も注目される劇作家ディヴィッド・グレイグの話題作、初来日

子どもも大人も一緒に考えるほんもののドラマ。

舞台にはたった三人の俳優。
しかし言葉と人形は、
あのワルシャワのゲットーを
巧みに描き出す。
演劇が、この世界と結ばれる
本当の瞬間がここにある。


イングランドの隣国、スコットランドの東部にある、人口15万人ほどのダンディ市。そこにある地域劇場「ダンディ・レップシアター」が青少年のために作った作品『コルチャック先生の選択』が日本にやってきます。国際的に活躍するスコットランドの若手劇作家デビット・グレイグのこの作品を、35歳の芸術監督ジェームス・ブラウニングが、俳優と人形の効果的なコラボレーションで演出していく傑作です。この機会に海外の青少年のためのすぐれた作品とぜひ出会ってみてください!


コルチャック先生を知っていますか?

コルチャック先生は、教育者、小児科医、作家、ストーリーテラー、ブロードキャスターであり、そしてユダヤ系ポーランド人でした。彼の子どもの教育に対する信念は時代を先取りしたものであり、彼の孤児院は、今日の私たちが発展させている教育ならびに保育理念のいくつかを先取りした方法で運営されていました。

○ 彼は、ひとりひとりが、教育を通して、知的に、感情的に、身体的に成長すべきだと認識していました。
○ 彼はすべての人々の寛容と容認を擁護し、そのハーモニーは平和的な事例と人間の強さを通して成し遂げられると信じていました。
○ 彼は子どもたちの表現する権利を信じ、子ども新聞を通して子どもたちに発言させました。
○ 彼は孤児院に設置した民主的な裁判所を通して、良き市民としての積極的な実践を示しました。

コルチャック先生は、寛容と認識あふれる雰囲気のもとで、すべての人々に等しく権利が存在する民主的な共同体をめざしたのです。

『コルチャック先生の選択 』
〜あらすじ〜

1942年夏、ワルシャワ。ユダヤ人が強制的に住まわされたゲットー「ユダヤ人特別居住区」。16歳の孤児アジオは、わずか2本の人参を盗んだ罪で警察官に銃を突きつけられていた。抵抗するアジオは、コルチャック先生に救われ、彼の営む孤児院で暮し始める。そこにはコルチャックの理想のもと、ひとりひとりの子どもの自主性と意見が尊重され、問題が起きれば自分たちの法廷で自分たちで裁く、子どもたちの民主的なコミュニティがあった。しかしながら彼の理想に基づく数々の実践は、ことごとく反抗するアジオの現実主義や、狂気の度を増すナチスらによって試され踏みにじられていく。コルチャックを深く尊敬しながらも、もう一人の孤児ステファニーは、アジオの闘いの意思にも心動かされていく。ついに、すべてのユダヤ人の移送が始まる。コルチャックは自分に差し伸べられた救済を無視し、子どもたちとともに歌いながら最後の行進を行った。静かに、力強く、人間の尊厳と抗議をこめて。一方、アジオとステファニーは一斉捜索を逃れ、闘うべくゲットーの地下へと潜っていく・・・。

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コルチャック先生/ジョン・ビィック
アジオ/ポール・ボイド
ステファニー/イオニア・二・クローイニン

演出家ジェームス・ブラウニングに聞く!

Q:この芝居の見所は?

A:青少年たちにとっての大きなポイントはアジオとステファニーの存在。二人を通して「自分だったらどうする?」「どの選択肢を選ぶ?」「大切なものはいったい何なのか?」って考えることです。一方大人の観客はコルチャック先生を通して思考します。例えば、私が観客だったら「ステファニーに何を伝えるべきか」「どのようにアジオに真実を伝えるか?」「こんなひどいことが実際に起こっていた」というだけでなく「どのようにしてこのような悲劇が生れたのか?」「このような状況下で私たちはいったい何ができるか?」ということまで描かれているから。この芝居は小さな「劇場」という空間の中で行われる一作品ですが、実際に起きたこと。この実際の出来事と観客を結びつける唯一の方法だと思っています。