依存しあう家族、「〜らしさ」を描く。
30歳を過ぎても親元を離れない若者が増えている。また娘の恋人が居候のように同居する家庭もある。
子離れできないでひたすら干渉し続ける親もいる。
誰かに寄生しなければ生き甲斐を見いだせない人々の価値観を探る。
数年前になろうか、「パラサイト・シングル」なる言葉が少し流行した。「独身貴族」とう言葉がほぼ死に絶えたのはそのせいだったように覚えている。でももう「パラサイト・シングル」も死語だと思っていたら、今度は「依存症」という言葉が重宝がられている。「買い物」依存、「パチンコ」依存、果ては「恋愛」依存に、「うつ」依存。みんな何かに依存している世の中、らしい。ますます深刻になるだろう老人介護も「依存の話」と言えなくもない。数年前に、「寄生者」と呼ばれた人たちは、今なお「パラサイト族」として、何かに寄生=依存し続けているのだろうか。もしそうだとしたら、どんなふうに? そんな考えを追いかけて生まれたこの作品は「依存」をめぐって「現代家族を哲学する物語」です。
ストーリー
3LDKの高見家に住むのは、会社勤めのお父さん、専業主婦のお母さん、バリバリキャリアOLの娘、大学生の息子。一見どこにでもありそうなフツーの一家だが、最近は少し様子が変わってきている。お父さんはプラモデルに夢中だし、お母さんは携帯メールで出会い系サイトめぐり、娘は年下でフリーターの彼氏を部屋に住まわせ、息子は大学も行かずに引きこもり。おまけにサプリオタクの隣のおじさんが、我が家のごとくしょっちゅう出入りしているという現状。
そんなある日、お母さんのお母さんが、アキレス腱を切ったことを理由に同居を求めてやってくる。なんとか同居を断りたい高見家だったが、追い打ちをかけるようにお父さんのお父さんまでもが独り暮らしの家を売り払い、同居を求めて乗り込んで来た……。
それぞれの言い分が交錯する中、家族会議が開かれた。結局、お父さん、お父さんのお父さん、お母さん、お母さんのお母さん、娘、娘の彼氏、息子、という7人が一つ屋根の下、窮屈な雑居生活を始まめることになってしまったのだが、お母さんのお母さんのギプスはいっこうにはずれる気配はなく、お父さんのお父さんはどんどん傍若無人になってゆく……。
すっかり居心地の悪くなった高見家。お母さんはますますストレスがたまり、お父さんと息子は衝突し、老人たちはいまだ孤独な生活の不安に悩まされている。そんな過密状態の家の中で、パラサイト族たちは、「自分のよりどころ」をうっすらと考え始め、「パラサイト」に終止符を打つべく、高見家を出ていくという結論をだしたのだった──。
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劇団一跡二跳
元新聞記者・古城十忍の作品を上演。常に事件やブームといった社会現象を題材に取り上げているが、その底には一貫として「人と人のコミニュケーションをどう築くか」とういうテーマが読みとれます。物語・お芝居として楽しんで観ることができ、見終わった後、そのテーマについて考えるきっかけになってもらえるようなジャーナリスティック・エンターテイメントな作品を作り続けています。
これまで取り上げた題材は、拒食症と過食症、離婚の時代の家族崩壊、コンピュータ・ウイルス、結婚紹介産業、葬送の自由、老人性痴呆症、体外受精、ひきこもり、幼児虐待など現代人の日々の生活に根ざしたものがほとんどです。
「演劇でなければできない表現」の追求を創作集団の柱として掲げ、日本人のディスコミュニケーションを扱った作品が中心です。
2003年3月21日、広島の中高生と古城氏と劇団員による演劇 『ひろしま発 肉体改造クラブ』を地元の演劇関係者との協力で実施、好評を博す。また、広島では、これまで「醜形恐怖。」「コネクト」「少女と老女ポルカ」の公演を行っている。
古城十忍氏イギリス留学帰国直後、再演出
文化庁の助成によりロンドン・スコットランドに留学していた古城十忍氏が帰国しての第一弾は、現代家族を描いて好評だった「パラサイト パラダイス」の再演出となる。 海外で受けた刺激が演出面にどう現れてくるのかご期待下さい。
2003年東京公演 観客の声より
人と空間がパズルのようにコロコロと分割され、変化していく。まるでマジックを見ているかのようでした。そんな不思議空間なのに、舞台は「ある家」というこれまた不思議。圧倒、鳥肌です。最後の暗転にものすごく感動しました。(男性・高校生・17才)
なんかすごかった!私の人生観変わったかも。きっとこの後、この家族は幸せになるんだろうなと思う。こういうテーマ、大好きです。ちょっと頑張ろうと思った。夢とか、生活とか、自分とか。(女性・高校生・18才)
家族ってただあったかいだけのものではなく、すごく冷ややかで重いものなのか?イヤ、そうでもないのかなぁ・・・って感じです。(男性・会社員・25才)
ユーモアもありながらも社会性の高いテーマで興味深かったです。(男性・67才)
家全体という設定で、セットがすごく面白く、どこで誰が何をやっているかがすぐわかるし、中心にいない役者さんたちも常に舞台上に存在しててすごいと思いました。細かいセルフまで気を抜けない面白さでした。自分も「らしさ依存」予備軍かも・・・。(女性・学生・20才)
一つのテーマを様々な年齢層の立場から演じ、問題を投げかけていたので幅が出て良かったです。私も専業主婦なので、なんだかいろいろと考えさせられたというか・・・涙が出ました。パワーをたくさんもらえる素敵なお芝居でした。(女性・主婦・34才)
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